クワバカ~クワガタを愛し過ぎちゃった男たち~ (光文社新書) by スティーヴン・キング ダウンロード PDF EPUB F2
特に前半はあまり愉快な内容の本ではない。何故なら、紹介されている人物は虫を愛してもいないし趣味人でもないからだ。
それが良く分かるのが離島における採集のエピソードで、希少種の情報を自慢の種として無闇に広め、事もあろうに「成果」を採集行の資金に変えているのだから呆れ果てる。1回何十万もかかるとあるが、それを賄うためにどれだけの虫を売り払ったのか。先達がこれでは後続のマナーを問うだけ無駄というものだ。
土地のものを勝手に取って金に変えるなど、住民にとっては収奪に他ならず、規制に動くのは当然だ。己を律する事ができない者は法で律するしかないからだ。これについて、著者は虫屋の主張を引用して施策を批判しているが、野放図を棚に上げて向こうも悪いやり過ぎだとは、虫のよい話ではないか。トータルでは赤字だの、コレクションにはならない平凡な昆虫を売っただけだのに至っては、開いた口が塞がらない。収奪しておいて赤字だから大目に見てよ、なんて理屈が通用するとでも思っているのか。
それにしても「コレクションにはならない平凡な昆虫」とは、なんと心無い表現か。昆虫はコレクターの為に生まれてくる訳ではない。彼らが自然をどう見ているかが伺い知れる一文である。
結局、彼らは自己顕示欲を満たす道具として虫を利用する売人でしかなく、共感も尊敬も一切できない。採集の場から締め出されたのも因果応報であり、同情に値しない。巻き添えを食った若者は気の毒ではあるが、こうした状況に至った経緯を学び、自制心と思慮深さを身に付けてもらいたい。それでこそ立派な大人の趣味人になれるというものだ。